デザイナーという職業は、さまざまな物事の本質をしっかりと見つめることから始まり、そこで感じたり理解したりしたことを色やモノ、かたちに転換して私たちに伝えることを使命としているのだなぁ。と、ISSEY MIYAKEの新しい腕時計、Glass watchを目の当たりにして感心しました。
本作はその名のとおり、ほとんどの腕時計に必然的に存在している風防部品を、まるでガラスで作った光のオブジェのように際立たせています。デザイナーの吉岡徳仁氏によると、この腕時計は約15年前にアイデアが浮かび、それから数多くの技術的な課題を解決することのできるパートナー(セイコーウオッチさんですね)の協力を得て完成したとのこと。特にガラスと腕時計本体との接合・接着には極めて高い技術が注ぎ込まれているそうです。
細心の注意を持って取り扱わなければならない芸術作品のような姿をしながら、普段の生活においてごく普通に使える。これって重要です。この腕時計、手にしてみると思ったほど重くなく、まるで今川焼あるいは大判焼や回転焼とも呼ばれるスイーツに近いフォルムで可愛らしく、角のアールの持たせ方も手触りの気持ち良さを考え抜いてあります。ガラスとは、鋭い破片をイメージさせる場合もありますが、見ていて安心するし、触ってみたくなるものにもなれる。そんな不思議な特性を持っているのですね。