Photo & Text:Gandhara Inoue
オトコとは、おしなべて機械モノが好きな生き物です。その王道を疾走するアイテムといえばクルマですよね。昨今では、若い世代のクルマ離れが話題になっています。でも、その理由は日本自動車工業会の調査によれば、クルマそのものが嫌いなんじゃなくて、維持費などの経済的な負担によるものらしい。世代を超えて、どうやらオトコはクルマに惹かれているようです。
クルマの楽しさのひとつは、複雑で馬力のあるメカニズムの発する鼓動を身体で感じられることではないでしょうか。この観点では、最近のクルマは車内があまりにも静寂になり、電池駆動の車種ではエンジン音などは皆無なのが寂しいというか物足りないというか、メカと自分が共にいる感じが薄い気がします。
これって、腕時計にも言えることではないでしょうか? 電池で動くクォーツ制御の腕時計って、耳を澄ませば秒針の動く音が聞き取れる場合もありますが、おおむね無音です。本当は腕時計の中にあるクォーツは1秒間に3万回以上の周波数で発振しているんですけど、その挙動を人間の脳は知覚できません。
それに対してメカニカルウォッチは、1秒間に4回とか5回、あるいはハイビートと呼ばれる機械なら10回振動する小さな振り子を持っています。腕時計を耳に押し当てればTiCTACと時を刻む音がする。自分の持ち物が、どのように動いているかをいつも感じさせてくれるから、機械式の腕時計には愛着や信頼感が芽生えるのだと思います。