宝飾と時計産業で栄えたドイツのフォルツハイムで金属加工と時計製作技術を学び、自らをウォッチビルダーと称するヨルク・シャウアー氏。彼が1995年に創設したのがハンドメイドにこだわる独立系ブランド『シャウアー』だ。一般的な時計ブランドではサプライヤーから完成品のケースを購入するが、『シャウアー』では7割程度の仕上がりで納品されたケースを自らが複数のヤスリを使って手作業で研磨していく。このモデルではベゼルと裏ブタに横のヘアライン、ケースには縦のへアラインと仕上げを変えて研磨を施しているが、絶妙な加減でヤスリを当てて研磨することで、硬質なはずの金属にシルクのように繊細な質感が生まれているのがわかる。もしや工業製品の範疇では語りきれない、工芸品的価値を獲得しているシャウアーの腕時計。まさに肌感覚でのフィニッシングはマシンで行う研磨仕上げとは別次元のきめ細やかな触感。実際に触れてみると、その魅力に誰もが心奪われる。