TiC TAC

THE Masterpiece COLLECTION 2016–2017

腕時計、こだわりの理由。

本当に気に入った腕時計をすることで、あなたの中で何かが変わる。5つのテーマでセレクトした腕時計たちには、それぞれの効用があるのだ。モチベーション、今を生きること、共感の発信、ブレない心、世界への視点‥。これは腕時計を選ぶための、こだわりに満ちたナビゲーションである。

スポーツウォッチは、かつて特殊なユーザーに向けて製作されていた。しかし、現在では腕時計の1ジャンルとして確立した感がある。文字どおりスポーツやアウトドア・アクティビティーでの使用に耐える頑丈さを備え、計時・計測機能などを搭載した姿は精悍で逞しい。正直なところ、これらの本格的スポーツウォッチの性能を100%活用できる現場に向かう必要に迫られる人は、それほど多くないだろう。冒険家、レスキュー隊員、レーサー。そんな肩書きを持っていなくてもスポーツウォッチを身につける権利は誰にでもある。極限的な状況でも揺るぎなく時を刻む信頼感。いざとなればユーザーの命に関わるほど重要な情報を正確に捉える精密感。スポーツウォッチに寄せられるユーザーの思いとは、水平対向エンジンで左右対象のレイアウトを持った4輪駆動車であるSUBARUを愛する人々の心情にも通じるところがある。性能を生み出すために必要な思想に共感し、支持する。スポーツウォッチが強烈に放つ思想としての身体性・運動性は、私たちを勇気づけてくれる。運動の美学を身につけるにあたり、制限は何もない。もちろんスーツ姿で使っても問題ないのだ。
腕時計の世界に、新しい文明の波が押し寄せてきている。今までの価値観、今までの構造とは異なる次世代の腕時計が、いつのまにか主流となるかもしれない。そんな時代の転換点を目撃するチャンスを私たちは与えられている。保守的で変化を好まない者はそこから目を背け、気づかないフリなどをしている。それとは逆に、むしろ積極的に変化していく世界を受け入れていくことを好む者もいる。珍しく、面白く、新しいコンセプトの腕時計。その特徴は、腕時計そのものが見た目や有益な情報を伝達する媒介となるメディアそのものであるということ。電子ペーパーで作られたモデルは、文字盤だけでなくベルト部分まで変幻自在のグラフィックデザインで見た目を変えられる。既に必要不可欠なスマートホンと常時接続するモデルは、今何が起きているかを手元に伝達してくれる。ポケットやカバンの中のスマートホンと連携した、新しいメディアを腕に巻き付ける。コンタクトレンズならぬコンタクトメディアという新世代デバイスを誰よりも早く身につけたい。その衝動を誇らしいと感じるのは、未来を変えていく速度の増進に自分自身が関わっていると実感できるからだ。
デザインという言葉の意味するところは広く大きい。意識をしていなくても、さまざまなデザインの中で私たちは暮らしている。そのなかでも、20世紀に頭角を現したインダストリアルデザインの世界にはスーパースターと呼べる偉大なデザイナーの存在が見受けられる。それは、同じく20世紀に大きく発展した映画というコンテンツに置き換えて考えてみれば理解しやすいだろう。映画の楽しみ方として、多くの人は話題の大作だからという理由で観に行く。だが、もうすこし映画に対する感度が高い人は、あの監督が撮っているから観るという積極的な選択と行動に出るはずだ。たとえば「私はスタンリー・キューブリックの映画ならすべて観ている」とか、「クエンティン・タランティーノの新作には驚かされた。やっぱり彼はヤバい」などなど。真の映画ファンは、映画監督の作家性を享受するセンスを持っている。同じようにインダストリアルデザインの世界に長けた人は、自分自身のアイデンティティを投射できるヒーローとしてのデザイナーを知っている。その作品は、デザイン好きにとって単なるグッドなデザインではなく、もっと自分をハイにしてくれるデザインなのだ。
腕時計が文字どおり耐久消費財として成り立ち、自分で時間を管理することのできる大人の男の腕に収まるべきアイテムとして存在していた時代。それはどのようなフォルムをしていたか? そのような問いかけに真摯に答えようとする腕時計がある。基本的な取り組み姿勢として、奇をてらうことなく真面目で強く、しっかりとした見かけを持つ。このことに加え、中身も長い使用に耐えるポテンシャルがあることも重要だ。腕時計にとって体幹にあたるムーブメントは、できることなら機械式が望ましい。電子制御のクォーツ方式ほどではないにせよ、実用的に充分な精度を保つ堅実なメカニズムが時を刻んでいく。10年15年と愛着を持って使い続けても、メンテナンスの際に「補修用の電子部品が払底したので修理不能です」などと言い渡されることなく、修繕を施すことが可能であるという安定感。このような特性を備えた一連の腕時計を“堅実スタイル”と呼ぶことにする。スタイルとはファッションではなく、立ち振る舞いの姿勢であり生き方そのものだ。だから時の流れに振り回されることなく、手堅く一歩また一歩と未来に向かって着実に進んでいくことができるのだ。
私たちの日常は、数限りない選択の積み重ねで成り立っている。たとえば日用品を選ぶ場合、それは無意識的に行われていることが多い。それでは、ある種の決心と個人の嗜好が色濃く反映される腕時計の場合はどうだろう?ここで伝えたいことは、腕時計の世界にはスイスと日本という2極が存在しているけれど、視線をすこし移動させた第3の選択があっても良いのではないか?という提案である。TiCTACは、ドイツの隠れた名品を生み出し続けている時計師やブランドを日本に紹介し、ディストリビュートし続けている。スイスの高級ブランドのように限られた富裕層をターゲットとした猛烈に高額な製品ではなく、日本のブランドのように数多く作ることを念頭に置いたマスプロダクツでもない。そのような前提条件を設けつつ、私たちがドイツに求めるイメージに合致する逸品を選び抜いている。華飾に走らず、道具としての本質を見極め、過度に先鋭的なテクノロジーを採用することはあえて避け、己の信念を曲げることなく愚直なまでに腕時計づくりに取り組む。そんなドイツ時計のエッセンスの詰まった腕時計に1票を投じれば、世界が少し違って見えてくる。
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